はじめに 〜 東天王岡崎神社って?
「岡崎神社って、うさぎがいる神社として有名ですよね?」

東天王岡崎神社 うさぎ像
出雲大社を思わせるうさぎ像
ちらほらとうかがえる参拝客には女性が多かった
「そうですね。境内には狛(こま)うさぎがいて、縁結びのご利益があると人気の神社です。でも、もともとはうさぎとは関係なく、もっと違う役割を持っていた神社なんですよ。」
「え?そうなんですか?どういうことです?」
「実は岡崎神社は、平安京を守るために設置された神社の一つ。つまり、単なる町の鎮守ではなく、平安京という都そのものを守る『王城鎮護(おうじょうちんご)』の役割を担っていたんです。」

東天王岡崎神社 正面
銀閣寺方面へと通じる大きな通りに面した鳥居
外からふと見ただけでは想像もできない様な、ワクワクする境内が中には広がっている
左右に生い茂る木々が、その全貌を覆い隠すかのようで
興味をそそられる
王城鎮護としての岡崎神社
「王城鎮護って何ですか?」
「王城鎮護とは、簡単に言うと『都を守るために特定の場所に配置された神社や寺院』のことです。平安京ができた頃(794年)、都の四方には邪気が入らないように守護のための神社や寺院が配置されました。」

「ということは、岡崎神社はそのうちの一つだったんですか?」
「はい。平安京の東側を守るために設置された神社で、当時は『東天王(とうてんのう)社』と呼ばれていました。」
「東天王……つまり、東の守り神という意味ですか?」
「そうです。ちなみに『天王』というのは、当時広く信仰されていた牛頭天王(ごずてんのう)のことです。」
「牛頭天王?初めて聞きました。」
「牛頭天王は、もともとインドの神様が仏教を通じて伝わり、日本では素戔嗚尊(すさのおのみこと)と習合した神様です。だから、岡崎神社はもともと牛頭天王を祀っていたんですね。」

東天王岡崎神社 鳥居
FGOで頼光さんの宝具ボイス
「来たれい四天王。いいえ、牛頭天王の神使達。我が記憶の形をとりて――参ります。
『牛王招雷・天網恢々』!」
の牛頭天王が東天王を指しているのですね
素戔嗚尊を祀る神社へ 〜 変化の背景
「でも、今の岡崎神社の祭神は素戔嗚尊ですよね?なぜ変わったんですか?」
「それには神仏分離(しんぶつぶんり)が関係しています。明治時代(1868年以降)、日本では神道と仏教を分ける政策がとられました。その影響で、もともと牛頭天王を祀っていた多くの神社が、代わりに素戔嗚尊を祭神とするようになったんです。」

東天王岡崎神社 境内
人も少なく、思いがけないお気に入りスポットを発見できた良い出会いだった。
「なるほど。牛頭天王と素戔嗚尊は同一視されていたから、入れ替わる形になったわけですね。」
「そういうことです。岡崎神社もその流れを受けて、現在は素戔嗚尊を主祭神とする神社となりました。」
岡崎神社の見どころ 〜 うさぎとの関係
「でも、どうして岡崎神社はうさぎで有名なんですか?」
「これは境内の由来によるものです。岡崎神社の周辺は、かつて野うさぎが多く生息する地域だったんですね。うさぎは多産であることから、『子授け』『安産』の象徴とされるようになりました。」

「だから縁結びや安産祈願の神社として人気があるんですね。」
「そうです。境内には『狛うさぎ』がいて、特に水をかけると願いが叶うと言われる『招きうさぎ』が有名です。」

東天王岡崎神社 狛うさぎ
まとめ 〜 岡崎神社の歴史と今
「岡崎神社って、単なる可愛い神社じゃなくて、平安京を守る役割を持っていたんですね。」
「そうなんです。もともとは『東天王社』として王城鎮護を担っていましたが、神仏分離によって素戔嗚尊を祀る神社となり、さらに時代とともにうさぎと結びついた神社として人々に親しまれるようになったんです。」

東天王岡崎神社 本殿
境内の最奥に位置する本殿
敷地自体はそこまで広くないはずだが、大きな木々に囲まれて
想像以上の荘厳さと静謐さが醸し出されていた
「平安時代から現代に至るまで、時代の変化とともに役割も変わってきたんですね。」
「まさにそうですね。神社の歴史を知ると、参拝の際に見る景色も変わるかもしれませんよ。」
語彙解説
• 王城鎮護(おうじょうちんご)
都(平安京)を守るために配置された神社や寺院のこと。
• 四方鎮護(しほうちんご)
都の四方(東西南北)を守るための神社や寺院の配置。
• 牛頭天王(ごずてんのう)
もともとインドの神様で、疫病を鎮める神として信仰された。後に日本では素戔嗚尊と同一視される。
• 神仏分離(しんぶつぶんり)
明治時代の政策で、神道と仏教を明確に分けるようになった。その影響で、多くの神社が仏教由来の要素を排除し、純粋な神道の祭神に変更された。
• 狛うさぎ(こまうさぎ)
狛犬(こまいぬ)のように神社を守る存在として設置されたうさぎの像。岡崎神社の名物。

東天王岡崎神社 本殿
おわりに
岡崎神社は、都を守る神社から素戔嗚尊を祀る神社へ、そして現代では「うさぎの神社」として親しまれるようになったという、興味深い歴史を持つ神社です。
その変遷を知った上で訪れると、きっと違った視点で楽しめることでしょう。
